競馬あれこれ 第170号

皐月賞へ向けた一戦・弥生賞を分析する

チーム・協会

【Photo by JRA

皐月賞へ向けたトライアル競走・報知杯弥生賞ディープインパクト記念(以下弥生賞)。そのディープインパクト(2005年)をはじめ多くの名馬が、このレースを足がかりとして3歳クラシックで活躍してきた。ただ、本競走出走馬による皐月賞制覇は2010年のヴィクトワールピサを最後に途絶えており、近年はアスクビクターモア(2022年菊花賞)やタスティエーラ(2023年日本ダービー)など、クラシック二冠目以降を制する馬が多く出ている。いずれにせよ、今後のG1へ向けて注目の欠かせないこの一戦。今年はどんな結果が待っているのか、JRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用して過去の傾向を分析したい。

近年は人気サイド中心の傾向が鮮明に

■表1 【人気別成績】

過去10年、1番人気は連対率70.0%・複勝率80.0%と優秀で、2番人気も複勝率70.0%の好成績。3~4番人気も計【3.2.4.11】複勝率45.0%と上々の結果を残している。特に2020年以降は3着以内の好走馬12頭中11頭がこの4番人気以内と、近年は人気サイド中心の傾向に拍車がかかっている。

穴なら4着以下1回の馬

■表2 【5番人気以下からの3着以内好走馬(背景緑:重賞)】

5番人気以下の好走馬は過去10年で表2の6頭。このうち5頭はキャリアで1回のみ4着以下があり、その1回を重賞(前走または前々走)で記録していた。残る1頭・シュヴァルツリーゼは1戦1勝馬。もし穴馬を買うとすれば、いずれかのタイプを狙いたい。

キャリアは2~4戦

■表3 【キャリア別成績】

※除外も1戦にカウント

表3はキャリア別の成績。キャリア2~4戦の馬が計【9.7.8.45】。10年で9勝を挙げ、複勝率も34.8%と高い。対してキャリア1戦以下と5戦以上は合計で【1.3.2.35】同14.6%とかなりの差がついているため、2~4戦の馬が主軸になる。

前走G1出走馬が高複勝

■表4 【前走クラス別成績】

前走クラス別では、G1に出走していた馬が複勝率70.0%をマーク。今年は前走朝日杯FS出走馬(複勝率85.7%)が不在だが、G1昇格後のホープフルS組も【1.2.5.5】で複勝率は61.5%と高い。これらオープン・重賞組が合計【8.7.10.36】複勝率41.0%と好走馬の大半を占めている。ただ、オープン特別組の好走馬3頭はいずれも連対率100%で弥生賞を迎えていた。今年はこれに該当する馬がいないため、重賞組中心という考え方でいいだろう。表3のデータと合わせ、キャリア2~4戦の前走重賞出走馬は【5.5.7.19】複勝率47.2%を記録している。

前走が芝1800~2000m重賞なら5着以内

■表5 【前走芝1800~2000m重賞からの好走馬】

今年は、前走で朝日杯FSをはじめとした芝1600mの重賞に出走していた馬の登録はなかった。そのため表5では、前走で芝1800mまたは芝2000mの重賞に出走していた好走馬をまとめてみた。この16頭すべて前走では5着以内に入っていた。

このうち、前走で芝1800mの重賞に出走していた5頭中4頭は前走が重賞初出走で、前走が重賞3戦目だったダンビュライトは表2で挙げた5番人気以下のデータに該当していた。一方、前走芝2000m重賞組はこのところホープフルS出走馬しか好走していない。このホープフルS組は昨年のトップナイフを除き、2走前以前に4着以下がなかったことで共通している(芝2000m重賞組全体では11頭9頭が該当)。

なお表は割愛したが、前走1勝クラス組は好走馬4頭中3頭が1勝クラス以下では4着以下の経験がなく、もう1頭(2020年1着サトノフラッグ)は本競走と同じ芝2000m戦で2連勝中だった。

【結論】

前走ホープフルS2着のシンエンペラーが最有力

前走G1出走馬が高複勝率を記録している弥生賞。今年はシリウスコルトとシンエンペラーが登録しており、この2頭ではシンエンペラーが上位になる。新馬、京都2歳Sと2連勝を飾り、前走のホープフルSでは2着。キャリア2~4戦、前走5着以内、2走前以前に4着以下なしと各条件に問題なく(表3、表5)、今年のメンバーでは最有力候補だ。一方のシリウスコルトは前走6着、3走前5着と減点材料があり強くは推しづらい。

他のメンバーは一長一短。前走芝1800m重賞組のシュバルツクーゲルは4番人気以内(表2)の支持を得られるかどうか。1勝クラス組のトロヴァトーレとファビュラススターも4番人気以内が条件になり、加えて1勝クラス組のキャリア2戦馬は【0.1.0.3】(2000年以降で【0.1.0.9】)と、あまり良い結果が残っていない点も気にかかる。

ならば5番人気以下の穴候補として、ニシノフィアンスレッドテリオスに注目したい。ニシノフィアンスは新馬戦1着、京成杯5着で表2の「4着以下1回を前走または前々走の重賞で記録」と表5の「前走5着以内」を同時にクリア。レッドテリオスは表2本文で挙げたシュヴァルツリーゼと同じ1戦1勝馬だ。近年は穴馬の出番が減っているレースだが(表1)、今年はヒモ荒れの可能性もあるとみたい。