競馬あれこれ 第153号

G1初制覇を狙うプログノーシスら日本馬13頭が参戦 香港国際競走4レースを展望

チーム・協会

2度目の香港遠征となるプログノーシス 

香港カップ】ロマンチックウォリアーに死角ありも欧州勢が強力、日本勢はチャレンジャー

昨年はG1ホース4頭を含む5頭の精鋭で香港Cの4連覇を狙うも、地元の新星ロマンチックウォリアーに一蹴される形となった日本勢。今年は3頭に減り、G1勝ちの実績もなく挑戦者へと立場が変わるが、舞台実績のあるプログノーシスとヒシイグアス、未完の大器ローシャムパークというメンバーの質は劣っておらず、タイトル奪回のチャンスはある。

主役を担うのはやはりロマンチックウォリアーだろう。昨年、ダノンザキッドにつけた4馬身1/2差はG1昇格前の1999年にジムアンドトニックが記録した3馬身3/4差を更新するレースレコードという圧倒的なもの。今年4月のクイーンエリザベス2世C(QE2C)でもプログノーシスに2馬身差をつけて快勝と、額面通りに実力を発揮されると日本勢は苦しい。ただ、今回は豪州遠征からの帰国初戦という点に死角も見える。レース間隔を日本に置き換えると、ドバイ帰りでヴィクトリアマイルに出走するよりも1週短くタイト。その辺りにつけ込む隙があるかもしれない。

日本勢では対戦経験のあるプログノーシスが打倒ロマンチックウォリアーの一番手だろう。QE2Cでは2馬身差をつけられたが、スローペースの最後方から直線入口でもジェラルディーナに締められて脚を余した面がある。当時より出走馬全体のレベルが上がり、乗り慣れた川田将雅騎手で臨む今回は、より厳しくなるであろうペースを味方につけられる公算が高い。

ヒシイグアスは2年前の香港Cで2着。その後の2年間で計6戦と相変わらず使い込めず、近走成績も停滞している状況だが、陣営が前走の天皇賞(秋)時に良化途上を認めていた。今季初戦の中山記念でG1ホースらを豪快に差し切ったように実力は健在。2年前と同じくJ.モレイラ騎手を確保しており、体調次第で上位争いも期待できる。

ローシャムパークは実績で劣るが、その分だけ未知の魅力を秘める。函館記念オールカマーの連勝でG1級の能力を見せ、C.ルメール騎手も素質を絶賛と“状況証拠”はそろっている。近親のルーラーシップが香港Cと同舞台のQE2C勝ちと血統的な後押しもあり、一気に頂点を極めても不思議はない。

前走コックスプレートを制したロマンチックウォリアー 

今年は欧州勢も強力だ。アイルランドルクセンブルクはレーティング123で、ロマンチックウォリアーとともに首位タイ。日本勢には厄介な相手が増えた格好になるが、前々で主導権を握る安定した取り口はロマンチックウォリアーにとってもプレッシャーとなるだろう。これまでロマンチックウォリアーのマークを受けてきた日本勢から見た時に、ゲームチェンジャーにもなり得る。

また、ハットトリックを祖父に持つフランスのオリゾンドレも侮れない。3歳馬ながらレーティング120は日本勢よりも上。レースでのアローワンス3ポンドを加えれば、ロマンチックウォリアーとルクセンブルクとともに実質首位となる。凱旋門賞前日のドラール賞など強烈な末脚で重賞を3連勝し、前走の英チャンピオンSも一旦は先頭に立って3着と地力を見せた。ここを勝ち切るだけの力はある。

ロマンチックウォリアー以外の香港勢では、前哨戦のジョッキークラブCを制したストレートアロンのC.ファウンズ調教師が、本番では4着か5着という控え目な評価。昨年の香港Cで3着、QE2Cでも4着(プログノーシスから1馬身差)のマネーキャッチャーを含め、勝ち負けには相当な展開の助けが必要か。

香港最強馬ゴールデンシックスティ 

香港マイル】ゴールデンシックスティの3勝目なるか、5頭で挑む日本勢には今年も高い壁

昨年はカリフォルニアスパングルが絶対王者ゴールデンシックスティを撃破した香港マイルだが、その後にゴールデンシックスティが巻き返して3季連続の年度代表馬に輝くなど健在をアピール。カリフォルニアスパングルが足踏みする一方、前哨戦のジョッキークラブマイルでは新勢力も台頭の気配を見せ、地元勢の層が一段と厚くなった感さえある。

ゴールデンシックスティは昨年こそ3連覇を逃したが、シーズン後半戦ではカリフォルニアスパングルだけでなく、2000mでロマンチックウォリアーも破るなど、衰えた様子を微塵も見せていない。今回は7か月余りの休養明けが課題だが、ジョッキークラブマイルで始動した過去2シーズンと比較して、レース間隔は3週しか変わらない。その2戦とも勝っており、ここに向けて乗り込みも入念。昨年のように勝負に絶対はなくとも、実績が示す通り普通の状態でさえあれば勝ち負けになるのではないか。

昨年を再現したいカリフォルニアスパングルだが、マークが厳しくなって粘り切れないケースが増えた。前走のJCマイルは2着の昨年より決着時計、道中とも1秒速いペースに巻き込まれて4着と、初めて3着をはずす結果に終わっている。絡んできたヴォイッジバブルにも後れを取っており、引き続き道中で溜めを作れるかが課題。一方で、共倒れのような形で上位2頭には離されたものの、強豪に先着してヴォイッジバブルには収穫もあった。昨季の香港ダービーと香港クラシックマイルで二冠を制した力は伊達ではなく、立ち回り一つで上位を狙える可能性を示した。

JCマイルでワンツーのビューティーエターナルとビューティージョイには展開が向いたが、当時のビューティーエターナルは単勝2.5倍の2番人気で、カリフォルニアスパングル(1.7倍)と差のない評価。香港ダービーではヴォイッジバブルと半馬身差もない3着、シーズン終盤に重賞連勝と素質の高さを見せていた。ビューティージョイは最後方からの直線勝負がはまった印象も、鞍上が直線半ばでステッキを落としながらも短アタマ差の2着に迫っている。チャンピオンズマイルも2着でカリフォルニアスパングルとヴォイッジバブルに先着しており、人気の盲点になるようなら注意したい。

マイルCSでG1初制覇を果たしたナミュール 

5頭が参戦する日本勢にとって、まずはこれら地元の5頭が強烈。先行から追い込みまでタレントがそろっており、数々のG1ホースたちが跳ね返されてきた例年と同様、壁を突き崩すのは難しいミッションとなることを覚悟しなければならない。

筆頭格はやはりナミュールとなるだろう。目下の充実ぶりに加え、前走のマイルCSでは展開に左右されない脚力を見せた。オークス秋華賞など長い距離での実績があるのも底力の証明になる。また、今回が3度目の香港遠征となるダノンザキッドは経験値で対抗したいところ。昨年の香港Cではロマンチックウォリアーに離されたものの2着と、コース実績に加えて距離の融通性があるのは強みだ。

セリフォスは前走のマイルCSをひと叩きと割り切れば、夏負けからの上積みを期待できる。ドバイターフでは世界を相手に大きな見せ場を作っており、今回はベストのマイル戦で国内トップクラスの真価を問われる。G1未勝利のソウルラッシュとディヴィーナには腕試しの場。ともに初遠征だが、ソウルラッシュは父ルーラーシップが2012年にクイーンエリザベス2世C勝ち、ディヴィーナは伯母のヴィブロスが2018年の香港マイルで当時の最強馬ビューティージェネレーションの2着に善戦と、シャティン競馬場に適性を感じさせる。

欧州からはフランスのトリバリストとアイルランドのカイロが参戦するが、トリバリストは今季の良績が道悪に偏っている。また、カイロは愛2000ギニーで僚友パディントンから2馬身差の2着も、当時は残り3ハロンを切るまで各馬が持ったままの上がり勝負。両馬ともオーナー、厩舎が名門で不気味さはある一方、スピード勝負への対応力という点で未知数な面がある。

前哨戦を制したラッキースワイネス 

香港スプリント】ラッキースワイネスが昨年の雪辱へ、欧州勢の初制覇なるかにも注目

昨年の香港スプリントでは不利に泣いたラッキースワイネスだが、その後に破竹の連勝劇で最優秀スプリンターを受賞。レーティング125は短距離カテゴリーで現役世界最高と、層が厚い地元でも頭ひとつ抜けた存在となっている。中心は揺るがず、先行力で勝負する日本の2頭はどこまで食らいつけるかだ。

今季は連敗スタートのラッキースワイネスだが、どちらもハンデ戦で酷量を負担したもの。別定戦の前走を勝ち切っており状態面に不安はない。定量戦の今回はますます有利で、10頭立ての今年はフルゲート(14頭)の昨年より頭数も手ごろ。不利を受けるリスクも減り、雪辱を果たす可能性が高そうだ。

待ったをかけるとすれば、これも昨年の覇者ウェリントンが最右翼か。香港スプリント後はラッキースワイネスに水を開けられたが、今季からJ.リチャーズ調教師の管理に移ったことで、新たな一面が引き出されるようなら面白い。リチャーズ師はニュージーランドで年間160勝など数々の記録を打ち立て、昨シーズンに拠点を移した凄腕。ウェリントンは前走のジョッキークラブスプリントが移籍初戦でラッキースワイネスから1馬身差の3着だったが、直線では詰まって追い出しがやや遅れた。叩き2戦目の上積みは必至だ。

スプリンターズSで2着だったマッドクール 

日本のマッドクールとジャスパークローネは、地元の2強に割って入るのが当面の目標。歴史的にはそれも難しい挑戦になるものの、今年はチャンスがあるかもしれない。層の厚さに定評のある香港の短距離路線だが、ラッキースワイネスとウェリントンの序列が変わっただけで、昨年から特に新陳代謝が進んだ印象もない。マッドクールとジャスパークローネはスプリンターズSで先行し、上位入線を果たしたように主導権をにぎっていけるタイプ。スムーズに流れに乗れるようなら残り目が生じることもあるだろう。

ただし、同じことは欧州から参戦する2頭にも言える。G1レース4勝のハイフィールドプリンセスは欧州でも現役最強クラスの強豪。イソップスフェイブルズは前走のBCターフスプリントで3着に突っ込み、最下位に沈んだジャスパークローネと対照的な内容を残している。直線レースが主体の欧州調教馬は香港スプリントで芳しい結果を残せていないが、ハイフィールドプリンセスはオールウェザーの下級戦ながらコーナーのコースで勝ち鞍があり、イソップスフェイブルズも前走で結果を出した。欧州勢による初制覇という快挙があっても驚けない。

残りの香港勢ではJCスプリントの上位から2着のビクターザウィナーと4着のサイトサクセスに注目。ビクターザウィナーは2kg軽い斤量の恩恵があったとはいえ、逃げ粘って2強の間に割って入った。今回は日本の2頭やハイフィールドプリンセスあたりとの先行争いになるが、それらを凌駕する脚力があれば壁にして押し切るケースも。また、サイトサクセスは昨年の香港スプリントで2着など、直近10戦は全て5着以内(重賞2勝)と安定している。香港スプリントにはリピーターが活躍する傾向もあり軽視禁物だ。

昨年のエリザベス女王杯覇者ジェラルディーナ 

香港ヴァーズ】日本勢と欧州勢の真っ向勝負、日本の参戦機会4連勝も十分

香港ヴァーズは2019年から日本調教馬が3連勝中(不参戦の2020年除く)と相性抜群のレース。大将格のシャフリヤールが7日に出走を回避することになったのは残念だが、残った3頭は実績のジェラルディーナ、将来性のレーベンスティール、充実期のゼッフィーロと個性にあふれ、参戦機会4連勝への勝利の期待も大きい。

9頭立てで日本と欧州、香港が3頭ずつという組み合わせになり、日本はG1連対馬がジェラルディーナのみ、対抗勢力の欧州は3頭ともG1連対馬と実績的に劣っている。ただ、平坦コースの中・長距離では今や日本が世界最高レベル。能力的には決して劣っていないはずだ。

ジェラルディーナは燃えやすい気性で安定感に欠けるが、昨年のエリザベス女王杯で負かしたウインマリリンが次戦で香港ヴァーズを制している。有馬記念宝塚記念ではイクイノックスとも接戦したように、ここを勝つために実力が不足している面は全くない。4月の香港遠征ではレース前のイレ込みで不発に終わっており、今回も当日の落ち着きに懸かっている。

レーベンスティールとゼッフィーロはともに前走で重賞初制覇を飾ったばかり。ジェラルディーナのような実績はないが、これからピークを迎えようとする将来性、心身の充実がある。レーベンスティールのセントライト記念皐月賞馬ソールオリエンスを完封。同馬との関係ではデビュー戦でもクビ差の接戦を演じており、すでにG1級の器を証明済みだ。香港ヴァーズで来年へ弾みとなるG1初制覇を飾りたい。

ヨークシャーオークスヴェルメイユ賞を連勝したウォームハート 

また、ゼッフィーロは4歳秋を迎えて充実。前走の目黒記念はモタれ癖のある左回りで重賞初制覇を飾ったことに価値があり、右回りの今回はさらに能力を発揮できる。ミエスクに遡る牝系にディープインパクトを掛け合わせた配合は、香港でG1レース2勝のラヴズオンリーユーと同じ。昨年はウインマリリンを勝利に導いたD.レーン騎手とのコンビ結成と、この一戦に向けて上積みの要素も多い。

地元の香港勢は歴史的に苦戦しているうえ、大将格のロシアンエンペラーが回避となり今年も苦しいか。日本勢の相手となるのはやはり欧州勢で、近年の香港ヴァーズで好成績を残しているA.オブライエン厩舎のウォームハートが強敵となる。エネイブルやアルピニスタといった凱旋門賞馬を輩出のヨークシャーオークス勝ち、前走のBCフィリー&メアターフではウインマリリンに1馬身余り先着と能力は十分。R.ムーア騎手も前走でジェラルディーナに騎乗するなど日本調教馬の能力を熟知している。

欧州勢の残り2頭はウエストウインドブローズとジュンコだが、G1での実績ほど内容を伴っていない印象がる。ウエストウインドブローズのエクリスプスS(3着)は2着から6馬身離され、コーフィールドCではアタマ差の2着もハンデは1着馬より1.5kg軽い54kgだった。また、前走のジュンコはドイツでG1初制覇を飾ったが、重馬場の2400mで走破時計は2分47秒06という異質なもの。サンクルー大賞の3着は楽勝のウエストオーバーに5馬身差をつけられている。