【朝日杯FS】隠し切れない「素質」と「将来性」 福永&川田が認めたダノンタッチダウンに不可欠な〝上積み〟
[GⅠ朝日杯フューチュリティステークス=2022年12月18日(日曜)2歳、阪神競馬場、芝外1600メートル]
先週の2歳女王決定戦に続き、今週日曜(18日)には2歳王者決定戦“第1ラウンド”GⅠ第74回朝日杯フューチュリティS(阪神芝外1600メートル)が行われる。重賞勝ち馬が3頭存在し激戦が予想されるが、注目すべきはダノンタッチダウン(牡・安田隆)だ。名手2人が認める「素質」と「将来性」を武器に、来春のクラシックに向けた栄光のタッチダウンを決める。
女王決定戦・阪神JFに並ぶ2歳GⅠ競走の朝日杯FS。ただし、こちらが王者決定戦と言い切れないのは同じ2歳GⅠ、距離二千のホープフルSが行われるがゆえ。阪神JFが桜花賞へと直結する同舞台で行われるのに対して、牡馬クラシックとはまるで異なるマイルの設定は来年を見据えれば確かに微妙なものだ。今年も、阪神JFに比べてメンバーが少々小粒に映るのは致し方ないところであろう。
しかし、昨年の優勝馬ドウデュースがダービーを制覇。朝日杯の権威復活に光を見せた。そのドウデュースも3番人気でのVだから、現時点の“小粒”という評価は、来季あっさりひっくり返っても不思議はない。
今年、重賞ウイナーを押しのけて注目を集めると思われるのはダノンタッチダウン。デイリー杯2歳Sではオールパルフェの2着に敗れるも、半兄ダノンザキッドがホープフルS優勝馬となれば、その将来性も含めて実績以上の評価を受けることも当然か。
その前走・デイリー杯はスタートダッシュがつかずに後方からの競馬。道中は折り合い重視のレース運びで直線で外へと出した。上がり3ハロン33秒1。一頭だけ違う末脚を見せて、ゴールでは勝ち馬と半馬身差にまで猛追しての2着は負けて強しだった。
ただし、新馬戦よりペースが速くなったとはいえ、前半の半マイルが47秒3のペースで好位置につけることができず、1番人気の支持に応えられずに敗れてしまったのも事実。上がりタイムの優秀さだけに着目してGⅠ級とすることには無理がある。
それでもなおこの馬が注目を集めるのは、血統の裏付けだけではなく、その「素質」と「将来性」が隠し切れないからだ。デイリー杯2着後に、感心の声を発したのは鞍上の川田だった。
「現状の成長具合でよくここまで走れますね。先々が楽しみです」
それは新馬戦で勝利した後に、「新馬戦としては言うことのないレベルの高い走り。難しい血統なんだけど、厩舎サイドがうまく修正して仕上げてくれた。良くなるのはまだ先だけど、初戦からこれだけ走れるのは能力の高さからくるもの」と話した福永の与えた将来への期待とリンクする。
実は、この2人の名手はともにレースの1週前追い切りの手綱を取って似たニュアンスの言葉を陣営に告げていた。福永はウッドチップにノメって走りづらそうにしていたことを、そして、川田は伸びシロがある中でも現状の緩さを。
だからこそ、2人はレースで急がせずに馬のリズムに合わせ、馬場状態のいい外めを気分良く走らせる形を選択した。新馬戦1着、重賞2着と結果こそ違っていても、ともにその将来性に思いをはせ、レースで潜在能力の高さを再確認したのは同じだった。
いくら素質が高くても、現状での完成度で及ばなければ勝てない2歳GⅠ。メンバー強化の上に多頭数となれば、これまでと同様のレースぶりで勝ち切るのは至難の業だろう。つまりは、デイリー杯からどれだけの上積みを持ってレースに臨めるかがキモだ。
「前走のラストの伸びを見れば、結果2着は悔しいですが、勝ちに等しい内容だったのではないでしょうか。まだ心身ともに幼さを残していながら、あれだけ走れたように素質は高いですよ。3コーナー過ぎあたりでモタついたようなところも、これから経験を積んでいく中で改善されてくるでしょう。前走後は在厩調整でここに照準を定めて、いい意味で変わりなく順調です」と安田隆調教師。
果たして、その心中にどれだけの“上乗せ”を期待しているのか…。最終追い切り、当日の気配など、細部にわたってチェックすればその“数値”が見えてくるかも。いずれにしてもこの未完の大器がGⅠの中心地にいることは間違いない。