競馬あれこれ 第63号

【2022年レース回顧】天皇賞・秋は関係者も「しびれた」今年のベストレース

 

天皇賞・秋・G1(10月30日、東京・芝2000メートル、15頭立て=良)

 最初から最後まで、息つくヒマもない展開だった。G1ファンファーレで観客席から起こった大歓声は、勢いよくゲートを飛び出したパンサラッサの大逃げで、どよめきに変わる。ターフビジョンに1000メートル通過「57秒4」が表示されると、再び大歓声。パンサラッサが後続を大きく離して直線を迎えてから、イクイノックスが強烈な末脚で差し切るまで、東京競馬場はまるで地面が揺れている錯覚に陥るほどの熱狂に包まれた。

 イクイノックス(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎、父キタサンブラック)のウイニングランが終わり、ようやく落ち着きを取り戻した観客席。ただ、レース後に取材させてもらった勝ち馬陣営は、まだ熱を帯びたままだった。所属する馬主シルクレーシングの米本昌史代表は「あれだけずっと歓声が続くようなレースって、なかなかないと思うんです。とにかくしびれたというか、直線は『届け!、届け!』と、もうそれだけでした」と興奮気味に振り返った。

 生産者のノーザンファーム津田朋紀場長は面白い話をしてくれた。「若い頃はきゃしゃなところがありましたし、(ロッテの)佐々木朗希と比較することもありましたが、今日は完成されたサラブレッドの美しさがありましたね」。

 コロナ禍でも少しずつ入場制限が緩和されたなかで行われた伝統のG1。イクイノックスが競馬界のエースとなれる力をファンの脳裏に焼き付けた、22年ベストと言えるレースだった。