競馬あれこれ 第175号

大阪杯】「最ッ高に嬉しい!」ベラジオオペラ4歳新エース襲名 ダービーの悔しさ晴らすGI初戴冠

 

春の中距離王決定戦・大阪杯横山和生騎手騎乗の4歳牡馬、ベラジオオペラ(左から2頭目・緑帽)がGI初制覇を飾った 

 春のJRA中距離王決定戦・第68回GI大阪杯が3月31日、阪神競馬場2000m芝で行われ、横山和生騎手騎乗の2番人気ベラジオオペラ(牡4=栗東・上村厩舎、父ロードカナロア)が優勝。道中2番手の積極策から直線で堂々抜け出し、初のGIタイトルを手にした。良馬場の勝ちタイムは1分58秒2。

 ベラジオオペラは今回の勝利でJRA通算8戦5勝、重賞は2023年スプリングステークスチャレンジカップに続き3勝目。騎乗した横山和騎手は大阪杯初勝利、同馬を管理する上村洋行調教師は開業6年目で嬉しいJRA・GI初勝利となった。

 なお、クビ差の2着には戸崎圭太騎手騎乗の3番人気ローシャムパーク(牡5=美浦・田中博厩舎)、さらにハナ差の3着には菅原明良騎手騎乗の11番人気ルージュエヴァイユ(牝5=美浦・黒岩厩舎)が入線。1番人気に支持された松山弘平騎手騎乗の昨年のダービー馬タスティエーラ(牡4=堀厩舎)は11着に敗れた。

タイム差なしで敗れたダービー「ずっと忘れられなかった」

「ずっとお世話になっている上村先生と厩舎スタッフに恩返しができた」と喜びを爆発させた横山和生騎手 

 激しい後続の追撃を振り切り、先頭で飛び込んだGI初勝利のゴール。

「最ッ高に嬉しいです!」

 そう喜びをかみしめた横山和騎手には、どうしてもベラジオオペラとともにGIレースを勝ちたい理由があった。それは「ずっと忘れられなかった」という昨年のダービーの借りを返すこと。後方待機から上がり最速の脚でインを突いたものの、タスティエーラにクビ+ハナ+ハナ差及ばず、数字の上ではタイム差なしの4着。日本競馬界最高の栄光をあと一歩のところで逃してしまった。だからこそ、あの日に先着されたタスティエーラ、ソールオリエンスを今度は打ち負かしてGIタイトルをつかめたことが何より嬉しい。心からの喜びは、冒頭の「最ッ高に」とタメを作って口から出た横山和騎手の言葉からも十分すぎるくらいに伝わってくる。

 レースは好スタートから2番手で先行する積極策。これはレース前から「今日の馬場傾向から考えて前に行きたいと思っていました」という鞍上の作戦であり、上村調教師も同じ考え。むしろトレーナーは「ハナを切っても構わないと、ジョッキーに話していた」という。それだけに流れに身を任せてというわけではなく、自ら押していく形で確保した2番手のポジション。ただ、前半から無理に行かせるとかえって引っ掛かってしまう馬もいるだろう。しかし、ベラジオオペラはそうならない――横山和騎手には相棒に対する絶対的な信頼があった。

「ベラジオオペラ自身がすごく操縦性のいい馬ですから、今回は思い切って先行策を取っていきました。本当に操縦性が良くて、スタートも上手で、折り合いもよくついて、しまいもしっかり頑張ってくれる。この子の良さをしっかりと生かせたレースだったと思います」

前半スローから決めたロングスパート

3コーナー過ぎからペースアップして直線早め先頭のベラジオオペラ(中)が最後までリードを守り切った 

 イメージ通りだったという道中2番手の追走。前半1000mが60秒2のスローペースだった分、向こう正面でローシャムパーク、ソールオリエンスが続けてポジションを上げてプレッシャーを掛けに来たが、ベラジオオペラと横山和騎手は慌てず騒がず、これを真っ向から受け止め、ペースアップという形で跳ね返してみせた。

「この馬の強みを活かしながらという競馬になりましたが、3、4コーナーからベラジオオペラには頑張ってもらうことになってしまった。しんどいだろうなと思いながらも、よく最後はしのいで結果を出してくれたので、本当に頼もしく思います」

 前半の緩やかな流れから一転、3コーナーからは横山和騎手が振り返った通り11秒台前半のラップが続く激流。その中でいち早く先頭に立ち、最後まで逆転を許さなかったベラジオオペラのスピード、スタミナ、根性は文句なしに素晴らしいのひと言。世代間の実力、あえて言うなら4歳馬の実力に世間からは疑問の目が向けられていた中で大阪杯を勝ち切った価値はベラジオオペラ自身にとっても大きなものとなるだろう。

上村調教師「まだ強い馬がいる。負けないような馬づくりを」

上村調教師(中)にとってもトレーナーとして初のGIタイトル獲得となった 

 もちろん、今回のレースには同世代の三冠牝馬リバティアイランド、1つ年上のダービー馬ドウデュースら日本のエース格が軒並み不在の中で行われたものでもあった。それだけにこの大阪杯を勝ったことがそのまま日本の頂点に立つこととイコールの意味ではない。それはベラジオオペラ陣営も重々承知。上村調教師はレース後の共同会見で、次走は未定としながらも「まだまだ強い馬がいますから、それらに負けないような馬づくりをしていきたい」と、さらなる大仕事へ力を込めた。この言葉は当然、その「強い馬たち」と互角以上に戦えるという手応えがあってのものだ。

「まだまだ成長の余地が残されている馬なので、これからもっと良くなっていく馬だと思っています」

 横山和騎手も同様に、これからのベラジオオペラに対して「まだちょっと緩さが残っているというのが上村先生との共通認識。なのでここから先、またどのような成長を見せくれるのか本当に楽しみしかないです」と、最上級の期待をかけている。

 牡馬クラシックホース2頭がまたも物足りない結果で終わったが、代わって4歳世代の新たなエースが誕生した。真価が問われることになるだろうドバイ遠征組との対決で、ベラジオオペラはさらに成長した姿を見せてくれるに違いない。4歳牡馬の逆襲はここから始まるか。