競馬あれこれ 第96号

桜花賞】断然1強ムードのリバティアイランドに死角あるのか 福永助手は“ノープロブレム”

 

2着シンリョクカに2馬身半の差をつける圧勝で昨年末の阪神ジュべナイルフィリーズを制し、記者投票では満票の支持を集めてJRA賞最優秀2歳牝馬に選出されたリバティアイランド。当然のごとく今年の桜花賞(9日=阪神芝外1600メートル)は断然の1強ムードで迎えることになる。

 とはいえ、「番記者」の立場としては無条件に賛辞を贈ってばかりはいられない。果たしてリバティアイランドに死角はないのか? 改めて再検証せねばなるまい。

 実際のところ、新馬勝ちから3か月の休み明けだったアルテミスSでは2着に敗れている。当時は新馬戦で上がり31秒4という圧巻の数字をマークしたことが評価されて、圧倒的な支持を集めていたのだが…。直線で外から先んじた勝ち馬ラヴェルに対して、仕掛けのタイミングがワンテンポ遅れたことでクビ差及ばなかった。

 そこから一転して快勝した阪神JFは、当面の敵となるはずだったラヴェルが大外の18番枠から出遅れたことを始めとする恵まれたうえでの勝利であったとするなら、4か月の休み明けで臨む桜花賞で逆襲に遭う筋書きは成立可能となるが…。前走への評価、そして今回の仕上がりに関して、陣営にまるで“揺らぎ”は見られなかった。

「前走の阪神JFはジョッキー(川田)がうまくエスコートしてくれたことで、思った以上に強い競馬で勝ち切ってくれました。その後は放牧に出て3月10日に帰厩。馬体をふっくらと見せて、落ち着いた雰囲気にあるのもいいですね。桜花賞への直行というローテーションも、おっとりとしたタイプではなく、気持ちの入りやすい馬なので、とくに問題はないとみています。帰厩してすぐに比べて、カイバ食いも良くなってきましたし、食いは細いほうでも、それで馬体を大きく減らすことはこれまでなかったので、それほど気にする必要もなさそうです」

 福永助手は数字以上にインパクトのある勝ち方を見せた前走を最大限に評価。その大きな要因を常に先を見据えてコンタクトを取ってきた川田との信頼関係が構築できたことに求めると同時に、2歳時に無理をさせなかったことが線の細さが目立ったころに比べての成長につながっていることを伝えてくれた。

 それでもなお、あえて死角を探せば、道悪になった時くらいか。もはや老婆心的な死角探しを受けての福永助手の弁は「良馬場でのパフォーマンスを見れば、できることなら桜花賞もいい馬場で走らせてあげたいとは思いますけどね。牝馬にしてはしっかりとした馬体をしているので、仮に道悪になっても、それほど苦にせずこなしてくれそうな気もしています」。こちらもまたノープロブレムが結論だ。最後は「重箱の隅をつつくのはもうやめにしませんか」と言わんばかりに…。

「クラシック1冠目となれば甘くはないとは思いますが、不安なところなく順調に調整できていますし、阪神JFでの走りを見ればコース、距離と舞台にも自信を持てますからね。ここまで3戦で馬の良さを引き出してきたジョッキーがここもいいレースをしてくれるだろうと期待しています」

 改めてリバティアイランドの軌跡を振り返れば、新潟で新馬勝ちした後に続戦で重賞に使う無理はさせなかった。そしてアルテミスSでは超スローの流れの中、踏み遅れることを承知の上で追い出しを待って馬に我慢を覚えさせた。その成果こそが本番と同じ舞台で見せた阪神JFの最高のパフォーマンスに帰結させることができる。

 そう、すべては牝馬クラシック第1冠・桜花賞を勝ち切るためになされてきた過程とするなら…。阪神JF以上の大歓声の中を悠々とゴールする女王の姿しか、もはやイメージできない。