競馬あれこれ 第94号

大阪杯】さすが武豊!藤岡調教師をうならせた名手の技 自身初の「2000以外」宝塚記念挑戦はあるのか?

 

[GⅠ大阪杯=2023年4月2日(日曜)4歳上、阪神競馬場・芝内2000メートル]

 満開の桜の阪神競馬場で行われたGⅠ大阪杯(2日=芝内2000メートル)は、好発からハナに立った武豊騎乗の2番人気ジャックドール(牡5・藤岡)が、ゴール前の後続の猛追をハナ差抑えて初のGⅠタイトルを獲得した。2着に1番人気のスターズオンアース、3着にはダノンザキッドが入った。勝ち時計1分57秒4(良)はレースレコード。果たして最大の勝因は何だったのか、検証する。

 GⅠ通算80勝目となる節目の仕事をキッチリと果たした武豊は「本当にうれしい」と充実の表情で語り、続けて「いいスタートが切れたし、第一のプランでレースを進めた。1、2角で少し力んだけど、馬自身が理解していいリズムで運べた。今日の馬場を考えて(前半5ハロンを)59秒ぐらいで運びたいと思っていた。追い切りの動きが良かったしパドック、返し馬、ゲート裏でも状態の良さが伝わってきた。GⅠで後ろの馬も強く、脚音も聞こえてきたけど何とか我慢してくれと思いながら乗っていた。直線は向かい風で馬もしんどかったと思うけど、最後までよく頑張ってくれた」とジャックドールの走りをたたえた。

 絶好のスタートを決め、5ハロン通過58秒9と5着に敗れた昨年(58秒8)とほぼ同ペースを刻む。手応え十分に4角を回りコーナリングで後続との差を広げ、ゴール直前で馬体を併せてこようとするダノンザキッドと、外から伸びてきたスターズオンアースの追撃を振り切り、一度も先頭を譲ることなく走り抜けた。

 16年ビッグアーサー高松宮記念)、同ジュエラー(桜花賞)以来のGⅠ3勝目となった藤岡調教師は「チャンスがあると思ってたけどやっと(GⅠを)勝てた」と笑顔。「道中もいいペースで運べていたし、きれいなストライドで走れていた。相手も強いんで最後はひやひやしたけど勝てて良かった」と胸中を語った。

「(前走後の放牧から)早めに栗東に戻したけど、なかなか状態が上がってこず苦労した。1週前の追いでは体に余裕があったこともあり、もっと動けていい馬だと思っていたが、そこからが我々の力の見せどころ。ジョッキーが乗った直前の追い切りや体重の調整もうまくいったし、状態は文句ないと思った」。続けて「香港(香港C=7着)ではイレ込みもあって力を出せなかったけど、落ち着いてレースに挑めるように練習を積んできた。多少速いペースだったけど時計勝負になってもやれる馬。ジョッキーにはスタートだけ出してくれとお願いしたが、さすが武豊」。

 香港カップでは環境の変化で体を減らし、スタートの出負けもありいいところを出せなかったが、課題を克服しての勝利。武豊も「もう一度チャンスをもらえ、結果を出すことができうれしい」と冷静な中に熱い思いを感じさせる言葉。厩舎スタッフとジョッキーの思いが結実しての勝利だった。

 次走については「宝塚記念のプランもあるけど、本質的に2000メートルの馬だと思っている。秋の天皇賞が大目標。そこへ向けてどういった選択肢があるか」(藤岡調教師)。2000メートルのスペシャリストが念願のGⅠ制覇。サウジ、ドバイワールドCと日本馬の海外GⅠ制覇で盛り上がった競馬界に、また一頭スターホースが誕生した。