競馬あれこれ 第55号

有馬記念で0勝の血統的ジンクスを「現役最強馬」が打ち破るか、レースと相性がいい5歳牝馬が上回るか

 

12月25日、中山競馬場で3歳以上馬によるGⅠ有馬記念(芝2500m)が行なわれる。

1年の総決算として行なわれるこのレース。今年は、昨年の勝ち馬エフフォーリア、今年の天皇賞・春宝塚記念を勝ったタイトルホルダー、天皇賞・秋を勝ったイクイノックス、ジャパンCを勝ったヴェラアズール、大阪杯を勝ったポタジェ、エリザベス女王杯を勝ったジェラルディーナ、昨年のエリザベス女王杯アカイイトと、7頭のGⅠ馬が出走する豪華メンバーが揃った。そんなレースを血統的視点から分析していきたい。

 今年で67回目を迎える有馬記念には、大きな血統的ジンクスがある。それは、「ミスタープロスペクター系の勝利がない」ということだ。ミスタープロスペクターといえば米国生まれの大種牡馬で、キングマンボ、ゴーンウエストファピアノフォーティナイナーシーキングザゴールドなどによって、米国のみならず、欧州、オセアニアと世界的に血を広げている。日本でも、キングカメハメハが2010、11年のリーディングサイアーに輝いた。

 もともとはスピードタイプの父系だが、2400mの日本ダービーキングカメハメハ(父キングマンボ)、エイシンフラッシュ(父キングズベスト)、ドゥラメンテ(父キングカメハメハ)、レイデオロ(父キングカメハメハ)で4勝。3000mの菊花賞ソングオブウインド(父エルコンドルパサー)、キセキ(父ルーラーシップ)、タイトルホルダー(父ドゥラメンテ)で3勝。2500mの距離が合わないわけではない。しかし有馬記念には、これまで51頭が挑戦するも5回の2着が最高着順という成績。2019年には、単勝1.5倍の圧倒的1番人気に推されたアーモンドアイがまさかの9着に敗れている。

 今回、このミスタープロスペクター系に当てはまるのが、ドゥラメンテ産駒タイトルホルダー、キングカメハメハ産駒ボッケリーニ、エイシンフラッシュ産駒ヴェラアズールの3頭だ。通常、血統予想はそのレースと相性がいい血統を挙げるものだが、今回は"逆転の発想"でタイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎)を推奨する。

同馬は昨年のGⅠ菊花賞(芝3000m)の勝ち馬。昨年のGⅠ有馬記念は5着に敗れたが、今年はGⅠ天皇賞・春(芝3200m)、GⅠ宝塚記念(芝2200m)を勝ち、「現役最強馬」と呼ばれる存在になった。

 今年の勝利で注目したいのが天皇賞・春。実は同レースもミスタープロスペクター系の勝利がなかったのだが、83回目の歴史で初めての勝利となった。しかも、それまでの天皇賞・春におけるミスタープロスペクター系の成績は、2着2回、3着1回と、有馬記念よりも酷いものだった。そんな血統的傾向があるレースで、タイトルホルダーは7馬身差の圧勝を見せたのだ。

 それ以外にも、タイトルホルダーは父ドゥラメンテとのイメージとかけ離れていることが多い。強烈な差し脚を武器にする父に対し、息子は逃げを得意とする。また、GⅠ皐月賞、GⅠ日本ダービーを勝った父に対し、父が故障で出走できなかった菊花賞を勝利し、父が故障で2着に敗れた宝塚記念を勝利した。タイトルホルダーは数々の血統的ジンクスを打ち破ってきた、いわば"ジンクスブレイカー"なのだ。

 昨年の5着もわずか0秒5差で、パンサラッサが作り出したハイペースに巻き込まれた影響が大きかったのに加え、鞍上の横山和生騎手も初騎乗だった。今回、パンサラッサはおらず、自身も騎手も大きく成長しているため、自信を持って臨めるはずだ。ここを勝って今年のGⅠを3勝とし、年度代表馬のタイトルを確定させたいところだ。

 もう1頭は人気薄になりそうなウインマイティー(牝5歳、栗東五十嵐忠男厩舎)に期待する。今年のGⅢマーメイドS阪神・芝2000m)勝ち馬で、前走のGⅠエリザベス女王杯は16着と敗れたが、2走前のGⅡ京都大賞典では3着に好走している。

ゴールドシップは3歳時の2012年の有馬記念勝ち馬で、4、5歳時にも3着した馬。その父ステイゴールドの産駒は2011、13年の勝ち馬オルフェーヴル、2009年の勝ち馬ドリームジャーニー、2012年の2着馬オーシャンブルーなどが出ているという、有馬記念とは相性のいい血統だ。

"5歳のウイン牝馬"といえば、先日のGⅠ香港ヴァーズでウインマリリンが、海外の大舞台ながらGⅠ初制覇を果たした。ウインマイティーは2020年のオークスで1着デアリングタクト、2着ウインマリリンに次ぐクビ差3着に好走していたこともあり、それに続きたいところだ。

 以上、今年の有馬記念は、タイトルホルダー、ウインマリリンの2頭に期待する。