競馬あれこれ 第17号

じゃい、追徴金問題の批判・疑問に答える「払戻金は無税にすべき」

競馬のおはなしが、じゃいさんを直撃したインタビューの続編。今回は、不服申し立てをした後、じゃいさんに届いた質問や批判について、じゃいさんの真意を聞いた。

批判・疑問①騒ぎが大きくなると、JRAが「テラ銭」を増やすかもしれない。それは困るので黙っていてくれ!
「この批判は結構多いんですよ。真意が伝わっていないので、説明しないといけないと思っています」

まずは競馬のテラ銭(主催者の取り分)の仕組みを解説しておく。

競馬のテラ銭は、馬券の種類などによって異なるが、約25%。100円の馬券なら、25円がJRAなどの主催者が取り、残りの75円が馬券を買った人の払戻金にあてられる。

馬券のお金は2度、国庫に入る

JRAの場合、受け取ったテラ銭25円のうち10円を国庫に納付する(第1国庫納付金)。残る15円でJRAは事業運営をして、利益が上がれば利益の半額を国庫に納付している(第2国庫納付金)。

2021年度の国庫納付金額は、第1が約3108億円、第2は約356億円で、1990年代前半には及ばないものの、ここ10年は上昇し続けている。

総務省の統計によると、払戻金にあてられる割合は、競馬を含む公営競技競艇・競輪・オートレース)は74~75%だが、サッカーくじや宝くじは40%台にすぎない。そうした事実から、「競馬のテラ銭が上がってしまうかもしれない」と危惧する声が出るのだろう。

「個人的には払戻金は無税に」
ただ、じゃいさんの思いは、まったく違う。

「馬券で儲かる人は全体の3%程度だと思っています。この状態で、さらに税金を取られてしまえば、競馬で勝てる人はいなくなってしまう」

「個人的には、払戻金は無税にしたほうがいいと思っています。誰が競馬を支えているのか、それは競馬ファンです。ファンが喜ぶためにどうしたらいいか、みんなで知恵を出さないといけない」

そう話した上で、こう付け加えた。

「野球のバッターと同じです。スイング改造をすると一時的にスランプになるかもしれないけど、新しいスイングを身に着けたら、スイング改造前よりバッティングがよくなる。無税にしても、ファンが増えれば、それはプラスになってJRAに戻ってくると思うんです」

批判・疑問②国税の判断に憤慨して、納めた税金を取り返そうとしているだけだろ!
「これは全くの間違いです。今回行動を起こしたのは、僕個人の損得とは全く関係ありません」

今回の不服申し立てをするにあたり、じゃいさんは自身のYouTubeチャンネルで弁護士費用などのカンパを呼びかけた。すると、「全額を負担するので戦ってほしい」という人が名乗りを上げた。

「一緒に戦っている感」が励み
しかし、じゃいさんはその申し出を断った。さらに多額のカンパをしようとする人に対しても、「100円でいいです」「上限は1000円にします」と言い、最近では「実際にカンパしなくても気持ちだけでありがたいです」と話すようになった。じゃいさんの心中にどんな変化があったのか。

「多くの人たちと『一緒に戦っている感』があります。競馬ファンから、代表して戦ってくれ、と言われて、励みになっています」

「僕はお金には執着がありません。競馬が娯楽として残ってくれたらそれでいい。その思いで立ち上がったんです」

批判・疑問③何を目的に騒ぎを大きくしているのか

「とにかく競馬が好きなんです。『馬券を勝っても儲からないから』という理由で馬券を買う人がいなくなれば、レースを運営するお金もなくなる。そうしたら、競馬という娯楽が廃れてしまう。それを避けないといけないという思いなんです」

じゃいさんにとって、忘れられない馬は、ミホノブルボンだ。1992年の皐月賞東京優駿日本ダービー)に勝ち、無敗のままで臨んだ菊花賞ライスシャワーに敗れ、中央競馬クラシック三冠を逃した。じゃいさんはミホノブルボンの魅力をこう語る。

「坂路調教コースで鍛えられて育ったから、スピードがあるというより、力強さがすごかったですね」

「競馬主催者を敵対視していない」
競馬ファンは金儲けのためだけに競馬を愛しているわけではない。馬の生き様やレースの勇姿にも惹かれ、馬券を買う。そうした競馬ファンがこれからもどんどん増えてほしい。その思いが、今回のじゃいさんの行動を支えている。

「僕は競馬主催者を敵対視しているわけではありません。正直言うと、今回の僕の行動がいろいろ報道されて、競馬主催者の皆さんには申しわけないことをしたとも思っています」

不服申し立てをした時期が夏の参院選直前だったこともあり、じゃいさんのもとには、複数の政党から出馬の打診があった。法律の改正は国会が決めるから、国会議員になることも解決の第一歩かもしれない。しかし、じゃいさんはすべての打診を断った。

「国会議員の中にも、いまの法律がおかしいと思っている人がいると聞きました。そうした議員の人たちに説明するなど、今後は不服申し立てと並行して、ロビー活動をしていくことで、競馬ファンの声をより多くの人たちに伝えていきたいと思っています」

じゃいさんと、その思いに賛同した人たちのムーブメントが、競馬の魅力を一層高めていくことを願い、見守っていきたい。

競馬が好きな方へ